CRM・顧客管理
営業インセンティブの按分 ── 後から動かさない
アポを取る人と商談を締める人が分かれている組織では、1 件の成約に複数人が関わります。このとき報酬をどう分けるかを決めていないと、成約した後に揉めます。
まず、按分の型を決める
シンプルな型で十分です。実際に運用しているのは次の 2 つだけです。
| ケース | 按分 |
|---|---|
| アポ獲得者と商談担当者が同一人物 | その人に 100% |
| アポ獲得者と商談担当者が別人 | アポ獲得者に 50% |
型を複雑にすると、支給の計算根拠を説明できなくなります。説明できない報酬は、金額の多寡にかかわらず不信につながります。
本当の問題は、ルールを変えたとき
按分の型そのものより難しいのは、ルールを変えたときに過去がどうなるかです。
たとえば 4 月に「アポ獲得者 50%」で運用していて、10 月に「40%」へ変更したとします。このとき、4 月に成約した案件の報酬はどうなるべきか。当然、50% のままであるべきです。
ところが、レートを設定値として 1 か所に持っていると、変更した瞬間に過去の支給額まで再計算されます。すでに支払った金額と帳簿が合わなくなります。
対処は 2 つ
1. 成約時点のレートをスナップショットする
成約が確定した時点で、そのとき適用されていたレートをその案件のデータとして保存します。以後、ルールが変わっても、この案件の計算はスナップショットした値を使います。
2. ルール自体を、適用開始日つきの履歴で持つ
「現在のレートは 40%」という 1 行ではなく、「4 月 1 日から 50%」「10 月 1 日から 40%」という履歴のテーブルで持ちます。こうしておくと、後から「この時期はどのルールだったか」を確認できます。
この 2 つは重複しているように見えますが、役割が違います。スナップショットは支給額を固定するため、履歴はなぜその額になったかを説明するためにあります。
金額は、全員に見せない
報酬を扱うと、必ず「誰にいくら払っているかが見える」問題が出ます。
Chaser では権限をロール × 機能フラグ × 所有権の 3 段で判定し、権限のない利用者には金額をマスクして件数だけを見せています。メンバー本人は自分の報酬だけを見られます。
消せないことが、前提になる
最後に、報酬を扱うシステムでいちばん重要な前提を書きます。後から数字を書き換えられないことです。
契約の全項目、入金の確認と解除、報酬ルールの変更を「誰が・いつ・何を・変更前 → 変更後」で記録し、UI からも API からも削除できないようにしています。監査ログが消せるなら、スナップショットにも履歴にも意味がありません。
入金そのものの管理についてはアポ率の読み方とは別の話になりますが、証憑の添付を必須にする設計とセットで考える必要があります。
まとめ
- 按分の型は説明できる範囲で単純に保つ
- ルールは必ず変わる。過去の支給額が動かないようにする
- 成約時点のレートをスナップショットし、ルールは適用開始日つきの履歴で持つ
CRM・顧客管理に、契約 × 月の入金マトリクスとあわせて実装しています。